これが自分だと意識している‘自分’の力で、長いこと無意識の層に追いやられてきた苦しみのもとを何とかしようとしても、限界にぶつかることがよくあります。
そんなとき、自分のなかにある大きな自分にゆだねるといいのです。
それは、魂とか、ハイヤーセルフとか、真我とか、さまざまに呼ばれていますが、意識の背後にあって、営々と自分を支えてくれている存在です。
癒しの場で誰かの体験が行き詰まったとき、ざぶとんを3枚ほど並べた向こう側に置いたいすに乗ってもらって、「三途の川の向こうからいまのあなたを眺めてみましょうか」と提案することもあります。人生の外側から自分を眺めるのです。
ある人の体験では、‘三途の川の向こうの自分’が自分をまっすぐ見ながら、何度も「だいじょうぶ」と言ってくれるのですが、そのつど胸がむかついて、「何がだいじょうぶなんだ!」「だいじょうぶなんかじゃない!」と、怒りの気持ちがどんどん出てきました。
代役をしてくれた人と押したり引っ張ったりしたあげくに、「三途の川の向こうの自分」から『「だいじょうぶじゃない」のもだいじょうぶなのよ』と言われた瞬間に、その言葉が腑に落ちて、体がホワホワ温かくなっていくのを感じました。
「三途の川の向こうの自分」と、じかにハグをしていなくても、少し離れて向かい合っているだけで、しっかりつながっている感覚があって、「ハートでつながる」ってこういう感じなのかなあ、と思ったそうです。
やってみよう『ただいま・おかえり』
13世紀に中国で書かれたという禅の公案集*のなかに、日々自分に向かって、「ご主人!」と呼びかけ、「はい」と自分で返事をする和尚の話が出てきます。
「心を落ち着けて静かにしていなさいよ」
「はい、はい」
というように問答をしたそうです。
「はい」と返事をしたのがおとな心だとすれば、呼びかけたのは大きな自分でしょうか。
私は、自分の心と向き合おうとするとき、大きな自分から「おかえり」の声を聞くようにしています。
あるがままの呼吸に気づきを向けて心の内側に意識を向けながら「ただいま」と声をかけると、それまで外のことに向いていた意識を内側に切り替えやすくなります。
そして、「ただいま」と声をかけたとき、留守を守ってくれていた家主さんの、低くどっしりとして頼もしい大きな自分から「おかえり」の声を聞く(聞いた気になる・聞いたふりをする)ようにすると、大きな自分からのバックアップが得られやすくなります。
*『無門関』、西村恵信訳、岩波文庫
やってみよう『人生の外側から』
大きな自分の存在を実感する易しい手立ての1つです。次のようにして、いきなり人生の外から自分を眺めてみます。
(1)あなたが歩んできた人生の旅路を、また旅路の途上にいる自分の姿を紙に描いてください。
(2)あなたはいま、どんな姿勢になって、どんな気持ちをつぶやきたくなっているのでしょうか。
(3)その気持ちをつぶやいているあなたを、人生の外側から眺めているあなたを描いてください。
(4)人生の外側のあなたは、いま旅路のここにいるあなたにどんなメッセージを伝えたいでしょうか。