大きなニレの木の根もとに、若い女の人が膝を抱えてうつむいていました。
「おまえは、近くの村の娘ではないね」
森の女王は抱いていた女の子を地べたに下ろしてから、
「いったいどうしたというんだい?」と声を掛けました。
女の人は、それに答えるより早く、女の子を見るなり、
「あっちへ行けって言ったでしょ!」
と叫んだものですから、女の子は女王が止める間もなく、猛烈な勢いでいま来たほうへ逃げていき、木の茂みに隠れました。
「いったいどうしたというんだい?」
女王が女の人の肩に手を置いて、重ねて聞くと、女の人はわっと泣きだしました。
人間の女たちは泣いて悲しみを和らげる生き物だ、と知っていましたから、女王は返事をせかせることもなく、女の人の悲しみに寄り添っていました。