うなずいた女王は森の奥に向かって、「おーい、誰かいないかい?」と声をかけました。すぐさまトロルの長老が顔を見せました。
トロルは森に住む生き物で、「ソルヴェイグの歌」が歌われる『ペール・ギュント』の劇にも登場します。でも、あまりいい役回りを与えられなかったもので、トロルたちは、そのお話を書いたイプセンという、これまたノルウェーの人間たちに愛されている男に腹を立てています。
「おかえりなさい、女王さま。お祭りはいかがでしたか?」
「楽しかったわよ」
女王は拍手喝采を受けた場面を思いだして笑みがこぼれました。
「ノルウェー政府の森の政策の動きが分かりましたか?」
トロルにはこの話題のほうに関心があったようです。それというのも、人間たちによる森の伐採が進むにつれて、かつてノルウェーを中心に、スウェーデン、フィンランドはおろか、海を越えてアイスランド、グリーンランド、さらにはカナダにまで広がっていたトロルたちの勢力範囲がしだいにせばめられてきていたからなのです。