「幼い頃から、自分のことが嫌いだと思っていたんだね。・・・よく見れば、いかにも魂の深そうな娘さんじゃないか。人の痛みを思いやる優しい心根が顔に表れているよ。それなのに、どうして自分にだけはそんなにじゃけんにするんだい?」
森の女王はしばらくのあいだ、女の人を慈しむように眺めていましたが、そのうち「あら」と気がついて、ニレの樹の裏側に声をかけました。
「おまえ、隠れていないで出ておいで」
姿を現したのは、さきほどの嘆き悲しんでいた子と瓜二つの顔をした女の子でしたが、ちょっと勝ち気そうな、きりっとした表情をしていました。
「おまえだね、この人の心をあやつって、あっちの女の子にじゃけんなことを言わせたのは」
「だって、だって・・・」女の子は口をとがらせて言いました。
「あの子ったら、物好きで、軽はずみなんだもん」
「そんなふうに人を悪く言うもんじゃないわ。相手のすてきなところを見てあげなきゃ」
「あの子にすてきなところなんかないもん」
「おや、おや、ずいぶん厳しいことを言うわねえ。でも、・・・」
女王は女の人に問いかけました。
「ねえ、あっちの子って、そんなに悪い子なのかしら」
「たしかに軽はずみなところがあるけど、・・・」
と言ってから、女の人はしばらく考えていましたが、やがてぱっと顔を輝かせて、
「・・・軽はずみというよりは、好奇心そのものなんです」
「ふむ、ふむ、好奇心ねえ」と女王は相づちを打ちました。
「好奇心に、なにか取り柄があるかい?」
「そりゃ、もう。だって、わたしの生い立ちはつらいこと続きだったけど、その好奇心のおかげで、つらいなかにもいろんな楽しみを見つけることができたんです」
「おや、まあ、そうだったのかい。だったら、知りたがり屋の女の子をじゃけんに追い払ってしまったらかわいそうだね」
「ええ、たしかに」とうなずいてから、女の人は離れた茂みに隠れている女の子に、「戻っておいで」と呼びかけました。
でも、女の子は戻ってこようとはしません。いったんは、茂みの陰から顔を出すのですが、こっちにいる女の子がにらんで威嚇するので、すぐまた隠れてしまいます。
「むりもないわね、こっちからこうにらまれていたんじゃ」
「どうしましょう、かわいそうに」女の人はうろたえました。
「まずは、こっちの女の子の気持ちがなごんだらいいわね。・・・この子に対して、何か言ってやることはないの?」
「この子は、えーと、この子は・・・」女の人は口ごもりながら考え込みました。